親の背中
障害児教育につくされている向野幾世先生のお話です。
近鉄奈良駅のバスターミナルで、車椅子の人が、前輪を歩道に乗せようと苦労していました。その時、5つぐらいの女の子を連れた若いお母さんが通りかかりました。手にしていたビニール袋を子供に持たせて、急いでかけより、車椅子の前輪あげを手伝いました。車椅子の扱いがわからなくてずいぶん苦労されてたようですが、やっとのことで歩道に乗り上げることができました。私は、この光景をバスの中から見ていました。車椅子の人に急いで駆け寄ったお母さん、歩道に乗り上げることができてほっと上気して子供の所に帰ってきたお母さん。子供に、「重かったでしょう、ごめんね」と言ったお母さん。子供は親の後ろ姿を見て育つと言います。このお母さんのように、さわやかに生きる姿は、子供の心に残ることでしょう。
誠実に生きる母親の姿に心をうたれます。ひたすら人につくす母親の姿に感動します。私たちも、真実の道を誠実に生きる姿勢でありたいものです。
仏教では、仏道を歩む人に欠くべからざる4つの姿勢を教えています。
一、布施 布とは自分の財物を他人に分け与えること。施とは精神的にも物質的にも人々のためにつくすこと。
一、愛語 正しい道理を話すこと。
一、利行 行いや言葉をやさしく、そして心に思いやりを持つこと。
一、同事 人々と苦楽を共にすること。
あなたも、この4つの姿勢を持つように心がけて、さわやかに生きたいものです。そして、あなたのお子さんや、お孫さんにとって、あなたは先生であることを忘れないで下さい。これは決してむずかしいことではありません。
あなたが親から学んだすばらしい生き方を子供に伝えるだけでいいのです。あなたの背中はだいじょうぶですか?
『聞法(1994(平成6)年8月1日発行)』(著者 : 西郷 教信)より