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「忌」の字の意味は

 誰かがお亡くなりになると、その家の入り口に張り紙をすることがありますね。地方々々で様々な風習があるでしょうが、関西ですと菱形の紙に「忌」という字が書いてある。これを貼るのは当然のように思っておられるでしょうが、どういう意味なのかお考えになったことがありますか。

 どうもおおかたの人にとってあの字にはいいイメージが無いようです。辞書を見ると始めに「忌み嫌う・はばかる」などと書いてある。この意味で張り紙に用いているとすれば、そこには死者を穢れた存在とする見方があるはずです。「この家には死者が出ましたよ、穢れております、どうぞご用心ください」と、近隣に知らせることになります。もし、そういう意味なら悲しいことです。貼らないほうがいいです。

 あるお寺の総代さんがお亡くなりになった時のこと。ご親戚浄土真宗のお寺があり、その若院さんが「これははずしましょう」と「忌」の張り紙をはずされ、半紙に「還浄」と書かれたそうです。

 「還」とは「かえる・もといたとこにかえる」という意味で、「浄」とはお浄土のことです。浄土に還る。「この娑婆にお出ましになって、お念仏のご縁をむすんでくださった。そうして今、娑婆の縁尽きてお浄土にお還りになったのです」と、尊んでそう書かれたのです。なるほど、その人格をお敬いなさる意味づけをなさったのだなあと思いました。

 年回のご法事をお勤めされるとき何回忌という言葉を用いますね。ここにも「忌」という字があります。この時には、決して「忌み嫌う・はばかる」の意味ではありません。実は「忌」には別の重要な意味があるのです。「つつしむ・うやまう」これが大切なのです。

身近なお方との別れに思いを致し、あらためて「わが身をつつしみ」亡きお方のご生涯を「おうやまい」する。その覚悟を表した文字なのです。

 お葬式から始まって、中陰も年回のご法事も、すべてこの「つつしみ・うやまう」の心構えが中心となるのです。あなたと共にこの人生を過ごすことができましたこと、有り難うございましたねぇと、あらためてわが身をつつしみ、ご生涯をおうやまいさせていただく。忌み嫌うことなどあり得ないのです。

 ひとつこれからは「忌」の字のイメージを変えて行こうじゃありませんか。

『聞法(1998(平成10)年9月21日発行)』(著者 :若林眞人)より

 

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